失業保険の不正受給がバレたら3倍返し!
失業保険を不正受給すると非常に厳しい罰則が待っています。
故意の不正は当然のことですが、意図せぬ不正でも罰則対象となるので、どういったことが不正に該当するのか知っておくようにしてください。
このページでは不正受給になる例や不正受給した場合の罰則内容などについて解説しています。
■目次
不正受給に該当する例
失業保険の不正受給に当たる行為は色々ありますが、よくあるケースを紹介しておきます。
不正受給の典型的な例
- アルバイトなどで働いて収入があったにもかかわらず申告しなかった(収入金額の虚偽申告もNG)
- 内職やボランティア活動を行ったのに申告しなかった(収入が無くても申告は必要)
- 実際に行っていない求職活動を実績として申告した
- 自営業の準備や営みを行っていたのに申告しなかった
- 就職したことを隠して申告した
- 就職が決まり雇用開始となる年月日を偽って申告した
- 傷病手当など他の手当てを受給しているのに申告しなかった
- 離職票の内容(離職理由も含む)を偽り、不正な日額手当や給付日数分の受給をする
特に注意が必要なのが、『これは申告の必要性はないだろう』と思ってしまうような事象です。
たとえば、『ボランティア活動』などです。ボランティアで収入もないし、1日だけだから申告の必要性はないだろうと思いやすいですよね。しかし、ボランティアで収入がなくても申告の必要性はあるのです。
失業保険を受給するには『失業状態』にあることが前提となります。賃金の有り無しにかかわらず『労働』と見なされる行為をした場合は申告の必要があります。
FXや株による収入は申告する必要がある?
基本的には申告の必要性はない
FXや株は個人資産の運用という扱いになり労働には該当しないため申告の必要性はありません。しかし、専業トレーダーのように資産運用の域を超え過度のトレードは労働と見なされる可能性があります。どちらに該当するかの明確な線引きはされていないので、受給期間中はトレードを控え転職活動に専念するようにしてください。
メルカリやヤフーオークションによる収入は申告する必要がある?
基本的には申告の必要性はない
考え方はFXや株のときと同じでその行為が『労働』に該当するかどうかが重要になってきます。
自宅にあるものをメルカリやヤフーオークションに出品し収入を得る分には労働と見なされませんが、どこからか仕入れてきたものを転売(せどり)していると労働と判断されてしまいます。また、自宅で自分自身で制作したものを販売しても労働と見なされる可能性が高いので注意してください。
不正受給をする人によくある動機
失業保険の不正受給が見つかった人がよく言う動機として以下のようなものが多いようです。いずれも安易な気持ちの動機ばかりですが、結果として大きな損失を受けることになります。
不正受給の動機
- アルバイトだから見つからないだろう
- 1日だけの就労だから問題ないだろう
- ボランティアで収入が無いので問題ないだろう
- 試用期間だから就職の扱いにはならないだろう
- 少額の収入だから申請はいらないだろう
- どうせバレることはないだろうし・・・
不正受給をした場合の6つの罰則
不正受給をすると非常に厳しい罰則が待っています。
具体的には以下の6つの罰則で、不正受給は絶対にすべきでないというのが認識させられる内容になっていると思います。
不正受給の6つの罰則
- 支給停止(失業保険の受給が停止され、受給権利がなくなる)
- 返還命令(不正に受給した失業保険を全額返金)
- 納付命令(不正に受給した金額の2倍に相当する額を罰金として支払う)
- 不正受給した日の翌日から延滞金(年率5%)が課せられる
- 返金・罰金の支払いを怠ると財産の差し押さえが行われる
- 悪質な不正受給は詐欺罪などで処罰されることがある
これらの罰則は雇用保険法第10条の4(返還命令)で定められているため強制力がります。
それぞれの罰則についてもう少しだけ具体的に解説しておきます。
支給停止
不正受給が発覚した時点で失業保険の給付が停止され、それ以降の受給権利が無くなります。
下図は給付日数120日の人の例です。本来120日分の給付日数があったとしても申告漏れなどで不正受給が発覚すると、それ以降の受給権利が無くなってしまいます。
返還命令
不正に受給した失業保険は返還を求められます。基本的には受給した金額すべてではなく、不正受給した分だけですがそこの判断はハローワーク側に委ねられます。もし、処分に不服がある場合は再審査請求をすることができます。(参照:不正受給扱いにされ処分に不服があるとき)
納付命令
不正受給した金額の最大2倍の額を罰金として納付を求められます。不正受給分を返還するのは不正に得たものを返還するだけなので大きな痛手にはなりませんが、返還分とは別に不正受給額の2倍の金額を請求されるのは大きな痛手となります。
不正受給した日の翌日から延滞金
不正受給した日の翌日から延滞金が発生し、その延滞金を支払う必要があります。ポイントとしては、『不正受給が発覚した翌日』からではなく『不正受給をした翌日』からだという点です。
上図のように不正受給が発覚した時点ですでに延滞金が発生しています。さらに不正受給したお金の返還および罰金の納付が遅れると延滞金はさらに増えていきます。
返金・罰金の支払いを怠ると財産の差し押さえ
不正受給したお金の返還、罰金の納付を怠った場合は財産の差し押さえをされる可能性があります。
悪質な不正受給は詐欺罪などで処罰
『不正受給をする人によくある動機』の章で記載したような安易な気持ちで行った不正受給程度では詐欺罪で処罰される可能性は低いですが、あきらかに悪意を持って不正受給を行った場合や金額が大きい場合は詐欺罪に問われる可能性があります。詐欺罪は10年以下の懲役に処され、犯罪によって得たものは没収または追徴されます。
6つの罰則による痛手の大きさは?
不正受給をした場合の罰則はこれまで解説してきた通りですが、不正受給がバレた場合、実際にどのくらいの痛手になるのか例を挙げてみたいと思います。
不正受給の例
失業保険の給付日数が120日ある人が、受給期間中アルバイトをし続け、84日目の失業認定後の受給でアルバイトがバレた
給付日数:120日
基本手当日額:7,000円
損失額:2,018,500円!
では、損失額がなぜ2,018,500円にもなるのかを解説していきます。
何事もなく満額受給した場合の受給額
840,000円(7,000円x120日分)
不正受給した額
588,000円(7,000円x84日分)
アルバイトした期間の受給額は労働時間と日数によって変わってきますが、一部減額もしくは減額されず受給が先送りという扱いになります。詳しくは以下のページで解説しているので宜しければ参考にしてください。
よって、受給した額がまるまる全額不正受給金額として扱われる可能性は低いですが、今回の例では最悪ケースを想定し受給した額588,000円が全額不正受給と扱われた場合で考えます。
不正受給による罰則
不正受給の罰則により以下の痛手をこうむることになります。
不正受給による罰則
- 不正受給した588,000円の返還【返還命令】
- 残り36日分(120日-84日) 252,000円の受給停止【支給停止】
- 不正受給した額の2倍の罰金1,176,000円【納付命令】
- 延滞金約2,500円(即日返還した場合)【延滞金】
- 財産の差し押さえの可能性
- 詐欺罪などで処罰の可能性
不正受給によって支払う額=1,766,500円
(588,000円+1,176,000円+2,500円)
この内、588,000円は失業保険から得られたお金なので実質的な出費ではありませんが、罰金1,176,000円と延滞金2,500円の合計1,178,500円は自腹になります。
本来満額受給していれば840,000円受給できたいたのに不正受給により逆に1,178,500円支払うことになってしまうのです。その差は非常に大きいですよね。
受給期間中アルバイトをしたとしても正しく申告すれば、受給額はたいして減額されることはありません。むしろ、受給が先送りされるだけで全く減額されないこともあります。それを知らずに不正受給することで上記のような大きな痛手をこうむることになります。
受給期間中のアルバイトに間しては以下のページで解説しているので宜しければ参考にしてください。
不正受給は『知らなかった』では済まされない
不正受給に関する内容は、受給申請をした数日後に行われる『雇用保険説明会』の場で必ず話されます。この説明会は受給申請者全員が出席を義務付けられており、不正受給に関して『聞いていない』、『知らなかった』という言い訳は通用しません。
また、受給申請者全員に配布される『雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり』にもしっかりと事例、罰則ともに明記されています。
不正受給扱いにされ処分に不服があるとき
不正受給に関する罰則は、『雇用保険法第10条の4』で定められていますが、不正受給と罰則の判断はハローワークに委ねられています。
もし、そのハローワークの処分に不服がある場合は、『処分を知った日から3ヵ月以内』に雇用保険審査官(都道府県労働局)に『審査請求』をお願いすることができます。
都道府県労働局の所在地や審査請求に関する詳細は、厚生労働省の以下のページでご確認ください。
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そもそも不正受給はバレるの?
不正受給はバレないケースも多々ありますが、これまで記載した通りバレた場合の罰則が非常に厳しいのでバレるバレない以前に正しく申告した方が無難です。
では、不正受給がバレる場合はどういったところからバレるのか?
主に以下のようなところから不正が発覚します。
不正が発覚する要因
- 自分から知らず知らずに話してしまう
- 確定申告で収入報告
- 事業所の各種帳簿、届出書類と受給記録とのコンピューターによる照合
- 会社訪問や受給者の家庭訪問
- 友人、知人、バイト先の知り合いなどからの密告
- 雇用先の雇用保険の加入
- ハローワークの職員に目撃される
- ハローワークの聞き取り調査
上記のように収入が少なかったり、1日だけの就労であっても発覚する要因はたくさんあります。大きなリスクを犯してまで不正受給するメリットはほとんどないので申告は正しくするようにしてください。